Jun 26, 2011

Time is not money.

time is not money

「鯛夢出鳴門円也」
この色紙は、小津監督からいただいた貴重な品ですが、不覚にもここに書かれている文字の意味を知らないままでした。
もちろん、父高順は小津監督ご自身から意味を聞かされており、生前この色紙をとても大切にしていました。
しかし、この言葉は小津ファンの間では有名なものだったんですね。
その謎解きは、片山杜秀氏の『ゴジラと日の丸』というコラム集に書かれています。
片山さんが実家を訪れ、父に小津映画のことをインタビューした際、この色紙に話が及んだのでした。

「Time is not money.」
「時は金也ではなく、時はお金に換えられない貴重なもの」
という意味を漢字に当てはめて表したものである、というのが素直な解釈なんですね。
恐らく、父もそのような理解だったのではないでしょうか。
でも、洒落者の小津監督のことですから、これには何かもっと深い意味が込められているのではないか・・・
熟考を重ねた片山さんは、英語と漢字の両面から、ユニークな解釈を導き出したのです。
詳しくは、片山さんの著書を読んでいただくのが一番なのですが、片山さんの解釈を踏まえたうえで、自分なりに考えてみました。

「Time is money.」は、アメリカ的合理主義の象徴的な考え方です。
敗戦後、日本はアメリカ型の市場経済社会へ邁進し、高度経済成長の時代を迎えました。
そして現在、日本は一体どうなったのでしょうか?
小津監督が亡くなって約半世紀が経過しました。
「Time is not money.」は、急速に「Time is money.」化していく戦後日本への、小津監督からの警鐘のメッセージだったのではないでしょうか。

鯛の夢は (日本人の志とは)
出鳴門円也 (鳴門の渦潮のごとき拝金主義から抜け出すことである)
つまり、日本人の生き方を見直し、もう一度日本人らしさを取り戻すこと・・・
「鯛夢出鳴門円也」
この言葉には、そんな小津監督の洒落と皮肉が込められているように思いました。

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