学生ロマンス 若き日
結城一郎 松井潤子 飯田蝶子
学生ロマンス 若き日は、小津安二郎第8作目の監督作品である。
1929年(昭和4年)に公開され、小津自身は26歳であった。
晩年、「自作を語る」の中では、次のように述べていた。
「スキーを織込んだ学生喜劇だったね。
主人公は下宿に貸間札をブラ下げて住んでる学生なんだな。
誰かが部屋を視に来るだろう、イヤナ奴だと、アッ今ぼくが借りたとこです、てなこと言って帰しちゃう。
奇麗な娘が来ると、彼女に部屋を譲って自分は犠牲になって出て来ちゃうんだね。
しかも部屋に物を置いて出て来るんだ。
忘れ物をとりに戻る顔をして女と話のキッカケを作るというテさ。
こういうストーリーを、当時伏見(晁)と僕はいくつも考えた。
このあたりの写真、伏見との共同が多いでしょう。
夕方になると伏見と二人で銀座へ出るんだね。
飲んで、飯を食って、しゃべりながら深川の僕の家に行く。
そこからまたつまらんことをしゃべったり、蓄音機をかけたり、夜更になると紅茶をのんだりしてるね。
すると明け方になるころにはストーリーが一本出来上っちゃうんだよ。
必ず一夜で出来上っちゃったものなんだ。
今考えると不思議な気がするよ。」
(引用:「自作を語る」)
■ ストーリー
早稲田大学の学生、渡辺は何とか女の子と仲良くなる方法はないかと知恵をめぐらせていた。そこで思いついたのが、自分の借りている部屋の窓に「貸間あります」という紙を張り、もしも男の客が来たならば、「もう決まりました」と言って追い返してしまい、好みの女の子が来たら知り合いになろうという作戦だった。
ついに、渡辺好みの千恵子という女性が部屋を借りに来た。もう翌日には荷物を持って引っ越してくるというが、渡辺はまだ自分の部屋探しさえしていないのだ。困った渡辺は、大学の友人山本の部屋へ転がり込むことにした。
ところが、山本も千恵子に好意を持ちはじめ、彼女にちょっかいを出すようになった。試験が終わると、彼らは大学のスキー部の連中と一緒に山へ出かけるが、そこで思いがけず千恵子と出会う。彼らは千恵子のことで張り合うが、彼女がそこに来たのは、スキー部の主将畑本とお見合いをするためであることを知る。
がっかりした二人は一緒に帰りの汽車に乗り、彼女のことをきっぱりと諦めることにする。彼らは車中で大学の教授と出会うが、教授は二人に厳しく落第を言い渡す。東京に戻ると、渡辺は山本に、千恵子と会うために用いたのと同じ策略を使って恋人を見つけてやると約束する。
結城一郎・・・学生・渡辺敏
斎藤達雄・・・学生・山本秋一
松井潤子・・・千恵子
飯田蝶子・・・千恵子の伯母
高松栄子・・・下宿の内儀
小藤田正一・・・その息子勝二
大国一郎・・・教授・穴山
坂本武・・・教授
日守新一・・・スキー部主将・畑本
山田房生・・・学生・小林
笠智衆・・・学生
小倉繁・・・学生
一木突破・・・学生
錦織斌・・・学生
蜂野豊夫・・・学生