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小津監督の仕事のやり方
本当に驚いたことに、音楽の指定は台本の段階でしたものとほとんど同じでした。
監督との最後の打ち合わせは、一年前の初対面の時と少しも変わらなかったのです。
監督との最後の打ち合わせは、初対面の時と少しも変わらなかったのです。(※管理人訂正)⇒「回想録」の記憶間違い
小津監督は撮影の前から、もうご自分の中で作品を完成しておられたのです。
だから、セットで如何に名優が名演技を見せても、演出の意図から外れたものは容赦なくNGにしてしまわれたのでしょう。
音楽も如何にそれ自体が優れたものであっても、画面からはみ出すようなものは決して受け入れませんでした。
その後、数人の映画監督と仕事をしましたが、最初の打ち合わせ通りに音楽録音ができたことは一度もありませんでした。
もちろん試聴会などはなく、音楽録音の前夜にオールラッシュという音無しの映像を見せてから、初めて音楽の打ち合わせをすることが多く、結果的に徹夜で作曲をしても間に合わず、スタジオで録音しながら作曲することも珍しくありませんでした。
小津映画と、たとえば日活での映画の仕事を比較すると、小津監督の場合は最初の台本を見ての打ち合わせのとき、音楽を入れる箇所が決まるとそれは最後まで動かないのです。
もちろん、フィルムが上がってくるまで寸法は分かりませんが、それでも事前にここはこういうメロディーとか、かなり具体的にスケッチをしておけるのです。
つまり、時間的余裕を持って楽に仕事ができるのです。
だから、雰囲気をつかむために撮影現場を見に行って、厚田雄春さんのカメラワークに関心するなんてこともできました。
ところが、日活ではどの監督さんも、明日録音というときになってやっと音楽の打ち合わせを始めるのです。
そこでオールラッシュを見て、「ここに音楽ね…、あっ、ここは役者が下手だから音楽でカバー…」なんて話になる。
これでは、作曲する方はたまったものではありません。