青春の夢いまいづこ
江川宇礼雄 田中絹代 斎藤達雄
青春の夢いまいづこは、小津安二郎第25作目の監督作品である。
1932年(昭和7年)に公開され、小津自身は29歳であった。
晩年、「自作を語る」の中では、次のように述べていた。
「「生れてはみたけれど」の撮影中に子供が怪我をしてね、それで途中からこれを振り出した。
ちょっと忠直卿行状記みたいな甘い話です。
考えてみると、この当時は、僕も相応の大作を年に四本、五本と撮っているが、それでも大して忙しいとは思ってなかったな。
今じゃ年に一本でもそれほど閑とも思えないものだがね。」
(引用:「自作を語る」)
■ストーリー
裕福な学生堀野哲夫は、斎木、熊田、島崎の3人とキャンパス生活を謳歌する親友同士だった。学校前のベーカリーの娘お繁が彼らのマドンナだが、どうやら堀野に好意を持っているようだ。
ところが、堀野の父が急死し、父の会社を継いで社長になるため大学を中退する。毎日慣れない社長業に忙殺され、友人たちやお繁とも会うことは叶わなかった。
やがて、卒業シーズンを迎え友人たちも就職先を見つけなければならないが、折からの不景気のため就職先が見つからない。困った3人は、堀野に頼み込んで彼の会社に入れてもらうことになった。
また、久しぶりに再会したお繁と一緒になる決意を固めた堀野は、友人3人の前で彼女と結婚することを宣言する。3人は皆祝福してくれた。しかし、3年も会わないでいた間に、お繁は堀野のことをあきらめて友人の一人斎木と結婚の約束をしていたのだ。
そのことを一言も言わなかった斎木や友人たちを堀野は激しく責めた。いくら自分が社長だからといって、なぜ正直に本当のことを言わなかったのかと斎木を殴りつけた。そして3人とも仕事のために、自分の気持ちを偽る態度をなじった。
最初は動揺した3人だったが、やがて堀野の気持ちを理解した。4人は仲直りし、しばらくして堀野と友人たちは会社の屋上から、斎木とお繁が新婚旅行に出かける列車に手を振るのだった。
江川宇礼雄・・・堀野哲夫
田中絹代・・・お繁
斎藤達雄・・・斎木太一郎
武田春郎・・・哲夫の父謙蔵
水島亮太郎・・・叔父貢蔵
大山健二・・・熊田
笠智衆・・・島崎
坂本武・・・大学の小使
飯田蝶子・・・斎木の母おせん
葛城文子・・・山村男爵夫人
伊達里子・・・令嬢
二葉かほる・・・婆や
花岡菊子・・・花嫁候補の令嬢