非常線の女
田中絹代 岡譲二
非常線の女は、小津安二郎第28作目の監督作品である。
1933年(昭和8年)に公開され、小津自身は30歳であった。
晩年、「自作を語る」の中では、次のように述べていた。
「与太者の話は『朗らかに歩め』以来だね。
メロドラマです。」
(引用:「自作を語る」)
■ストーリー
時子は昼間はタイピストとして働いているが、元ボクサーのチンピラ襄二の情婦をしていた。腕っぷしが強く、男気のある襄二は皆のあこがれだった。ボクシングジムの新人宏も襄二にあこがれ、子分にして欲しいと頼み込む。
宏は学生で、レコード店に勤める姉和子と二人暮しだった。襄二の子分になってから、生活が乱れ勉強もしなくなった宏を心配した和子は、直接襄二に会い宏を仲間からはずして欲しいと頼んだ。
襄二は、弟を思う和子の純真な優しさに心を惹かれるのだった。それに気付いた時子は、和子を脅そうとするが逆に彼女の純粋さに打たれ、自分たちも改心して出直そうと決心する。
襄二もチンピラ稼業から足を洗い、堅気の仕事に就くことに同意した。しかし、宏が姉の店の金に手を出してしまったことを知り、宏をかばうため最後の危険な仕事に取りかかる。
襄二と時子は、時子の会社から金を盗み出し、その金を宏に与える。時子は襄二に自首を提案するが、襄二は聞き入れず逃亡しようとする。やむを得ず、時子は襄二の足を拳銃で撃った。
観念した襄二は、別れを前に時子と強く抱き合った。二人は警官に連行された。
田中絹代・・・時子
岡譲二・・・襄二
水久保澄子・・・和子
三井秀夫・・・その弟宏
逢初夢子・・・みさ子
高山義郎・・・仙公
加賀晃二・・・三沢
南條康雄・・・社長の息子岡崎
谷麗光・・・秘書
竹村信夫・・・ボクシングクラブのボス
鹿島俊作・・・ダンスホールの与太者
西村青児・・・巡査