菊五郎の鏡獅子
鏡獅子は、小津安二郎第35作目の監督作品である。
1936年(昭和11年)に公開され、小津自身は33歳であった。
「音羽屋は動かなくても女らしく見える。
客席に背を向けて、足を開いてお尻が落ちているだけでも、娘らしく感ずる」
(小津安二郎)
■ストーリー
これは、六代目尾上菊五郎による追真の演技を記録したドキュメンタリーである。小津安二郎が心酔した歌舞伎役者、それが六代目菊五郎だった。
菊五郎が演じる「鏡獅子」を見て、その荒々しい獅子の舞いにすっかり魅せられた小津は、その後この記録映画を撮った。日本の伝統芸能を海外に紹介するため製作された映画であり、後に「美女と野獣」のモチーフになったとも言われている。
獅子の精が乗り移って、舞台狭しと狂い舞う圧巻の演技は、外国人にも大いに驚きと感動を与えたようだ。鬼気迫る菊五郎の演技は観るものを圧倒し、あまり歌舞伎に馴染みのない人にも実に興味深い映像となっている。
舞・・・尾上菊五郎(六代目)
謡・・・松永和楓
三味線・・・柏伊三郎
太鼓・・・望月太左衛門