お早よう
島津雅彦 笠智衆 設楽幸嗣 三宅邦子
お早ようは、小津安二郎第50作目の監督作品である。
1959年(昭和34年)に公開され、小津自身は56歳であった。
晩年、「自作を語る」の中では、次のように述べていた。
「このストーリーはずいぶん昔からあっためていたものです。
人間同士というのは、つまらないことばかりいつも言っているが、いざ大切なことを話し合おうとするとなかなかできない。
そんな映画をとってみたかった。
ところが、これはいざ撮ろうとするとなかなか難しい。
監督協会なんかに行って、このストーリーを話すと、みんな面白いと言う。
じゃあ、誰にでも譲るよ、といっても一寸手が出せない。
そこで、やっぱりぼくがやってみよう、とつくった。
もっとも昔考えていたストーリーはもっと渋いものでね。
ただ、こっちも年をとると、興行的な面を考えるので、なるべく笑ってもらえるような映画につくり変えた。
興行的配慮というより、多くの人々に見てもらいたいためと言った方がいいな。」
(引用:「自作を語る」)
■ストーリー
東京郊外を流れる大きな川の堤防近くに小さな住宅街がある。ここでは、噂話の好きな奥さん連中やいたずら盛りの子どもたちがにぎやかに暮らしていた。
近頃、子どもたちの間ではおでこを指で押すとおならをするという品のない遊びが流行っており、上手におならを出すことが自慢の種になっていた。林家は、夫の啓太郎と妻の民子、中学一年の実と次男の勇、それに民子の妹有田節子の五人家族である。
林家にはテレビがなかったが、実と勇は他の子供たちと同様テレビに興味津々だった。大相撲の中継が始まると、この辺で唯一テレビを持っている丸山家に入り浸りになってしまい、まるで勉強をしないのだ。
民子はそんな実と勇を叱るが、子供たちは「それならテレビを買ってくれ」と反抗した。啓太郎は怒って、「子供は余計なことを言うな、少し黙っていろ」と怒鳴った。子どもたちは、それならば父親の言いつけどおり何を言われても一切口を利かないことにした。近所の人と顔を合わせても挨拶もしなければ、学校で先生に質問されても沈黙を貫き通す徹底ぶりだ。
しかし、母親におやつを要求することもできなくなり、腹が減った二人は家からおひつを持ち出し、堤防の上で食べようとしているところを巡査に見つかってしまう。あわてて逃げ出した二人は、そのまま行方がわからなくなってしまった。
心配した節子が、子どもたちに英語を教えている福井平一郎にも協力してもらい、ようやく駅前でテレビを見ている二人を見つけ出した。家へ戻った二人は、そこにテレビがあるのを見て飛び上がって喜んだ。
どうやら、定年を迎えてセールスマンになった近所の富沢から月賦で買わされたものらしい。やっと口を利くようになった二人は、上機嫌で再びおなら遊びを始めるのだった。
笠智衆・・・林啓太郎
三宅邦子・・・林民子
設楽幸嗣・・・林実
島津雅彦・・・林勇
久我美子・・・有田節子
三好栄子・・・原田みつ江
田中春男・・・原田辰造
杉村春子・・・原田きく江
白田肇・・・原田幸造
竹田浩一・・・大久保善之助
高橋とよ・・・大久保しげ
藤木満寿夫・・・大久保善一
東野英治郎・・・富沢汎
長岡輝子・・・富沢とよ子
大泉滉・・・丸山明
泉京子・・・丸山みどり
佐田啓二・・・福井平一郎
沢村貞子・・・福井加代子
須賀不二男・・・伊藤先生
殿山泰司・・・押売りの男
佐竹明夫・・・防犯ベルの男
桜むつ子・・・おでん屋の女房
菅原通済・・・客・通さん