秋刀魚の味


岩下志麻 笠智衆

秋刀魚の味秋刀魚の味は、小津安二郎第54作目の監督作品である。
1962年(昭和37年)に公開され、小津自身は59歳であった。

野田記――「小早川家の秋」を宝塚で撮影中、早く次回作の題名を決めてほしいと、しきりに松竹から催促され、取敢えず「秋刀魚の味」とは決めたものの、腹案は何もなく、ただ、秋刀魚を画面に出すようなことはせず、全体の感じをそういうことにしようという気持だけであった。
いよいよシナリオにかかるころ、五社長会議というのがあり、では他社の俳優を借りないで、大船の人たちとフリーの人たちだけでやろうということになって、加東大介さんだけを東宝から借りることにした。
このシナリオの執筆中、小津君のお母さんが他界されたが、その葬送も終って再び蓼科へ来た時の日記に小津君はこう書いている。
「もう下界はらんまんの春、りょうらんのさくら。此処にいてさんまんのぼくは『さんまの味』に思いわずらう。さくらはぼろのごとく憂鬱にして、酒はせんぶりのごとくはらわたににがい」
(引用:「野田記」)

■ストーリー
初老の会社員平山は、学生時代からの友人河合や堀江と酒を呑むのが楽しみだった。堀江は娘のような若い妻をもらったが、平山は妻に先立たれて以来独身を通していた。長男の幸一はすでに結婚して家を出たので、今は次男の和夫と長女の路子と三人暮らしだ。

河合と堀江からは、早く路子の結婚相手を見つけてやるように促されていたが、平山はなかなか娘を手放す気にはなれなかった。だが、同窓会で久々に再会した恩師佐久間(ひょうたん)の姿を見て、考えを改めるようになった。佐久間も早くに妻を亡くし、娘の伴子と小さなラーメン屋をやっているが、とうとう伴子を結婚させてやれなかったと悔やんでいたのだ。

このままでは、自分たちも佐久間父娘と同じ道を辿ってしまう。そう考えた平山は、路子に早く結婚するべきだと進言する。はじめは不審に思う路子だったが、路子も結婚願望がないわけではなかった。

実は、路子は幸一の後輩三浦豊に密かに思いを寄せていたのだ。平山から相談を受けた幸一は、早速三浦にそれとなく聞いてみたが、少し前に別な女性と婚約したばかりだった。それを聞いても気丈に振舞う路子だったが、落胆ぶりは隠しようがなかった。

しばらくして、河合の妻が紹介してくれた相手との縁談話が上手くまとまり、路子は結婚することになった。路子は平山のもとから巣立って行った。結婚式のあと、平山はバー「かおる」で酒を呑んで寂しさを紛らわそうとした。「かおる」のマダムは、どこか死んだ妻の面影を感じさせるところがあった。

やっと肩の荷が下りた平山だったが、結婚式というよりもまるで葬式の帰りのような心持ちだった。娘のいない生活は、初老の平山にとって何とも虚しいものだった。

笠智衆・・・平山周平
岩下志麻・・・平山路子
三上真一郎・・・平山和夫
佐田啓二・・・平山幸一
岡田茉莉子・・・平山秋子
中村伸郎・・・河合秀三
三宅邦子・・・河合のぶ子
北龍二・・・堀江晋
環三千世・・・堀江タマ子
東野英治郎・・・佐久間清太郎
杉村春子・・・佐久間伴子
吉田輝雄・・・三浦豊
加東大介・・・坂本芳太郎
岸田今日子・・・「かおる」のマダム
高橋とよ・・・「若松」の女将
菅原通済・・・菅井
織田政雄・・・渡辺
浅茅しのぶ・・・佐々木洋子
牧紀子・・・田口房子
須賀不二男・・・酔客

sight-and-art.org

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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