小津安二郎のスケッチブック

探しものがやっと見つかりました。いつ頃だったか、ずいぶん以前に見たはずなんですが、一体どこへ仕舞い込んでしまったのか・・・。それは、小津監督がスケッチブックや葉書、色紙などに描いた絵と文字を集めたものでした。

残念ながらオリジナルではありませんが、ご本人が描いた面白そうなものから抜粋した画集のようです。印刷して販売したものなのか、何かの記念品としてスタッフや関係者へ贈呈されたものなのか、詳しいことは分かりません。立派な化粧箱に収められており、わりに高級感がありました。

小津監督が小学生の頃に描いた絵を見たことがあります。素人の私が見ても、同年代の子供が描く絵とは比較にならないほど緻密で、レベルの高さを感じました。幼少の時分から絵の才能に恵まれ、もし美術の道を志していたとしたら、高名な画家やイラストレーターになっていたかも知れません。

また、小津監督は字も大変お上手で、やはり小学生時代に書いた墨文字は見事なものでした。絵画も文字も得意で、それらをスケッチブックにバランスよく配置する能力にも長けており、それは後年絵コンテを描く際に、その稀有な才能は存分に発揮されました。

ワンカット毎の構図に徹底的にこだわった理由は、少年期に培われた美的センスやバランス感覚を、映像の上でも表現したかったということではないでしょうか。スタンダードサイズの画面は、小津監督にとって真っ白なスケッチブックだったのです。つまり、映画はスケッチブックに描かれた完成度の高い絵画一枚一枚の集積であったということです。

画集の表紙には、以下の註釈文が書かれていました。

絵を画くことも字を書くことも、小津安二郎は好きであった。絵の具を、いつも用意していた。折をみて稽古していたし、かがみこんで、苦しそうなくらい荒い鼻息を鳴らして、熱中していた。
ここにあるものは決して代表作というようなものではない。酔余のすさびもある。こんなふうに発表されるとは夢にも思わずにしたため、求めるひとに少しも構えずに手渡した数葉と、机辺のスケッチブックから選び出した。
「構えずに」ということと、完全主義ということに、いささかの註釈をつけるなら、小津安二郎は既に晩年、自己の完成度に見極めがついて(美的生活の理想人生の限度がわかって)、自由になっていたということだろう。
しかし真面目に描いた。
彼には終世一種の装飾主義的なあそびがあった。それも、真正直に表出してはばからなかった。

以下より、画集のスキャン画像をご覧いただけます。

sight-and-art.org

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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