小津安二郎監督作品の中から、フィルムが消失してしまい、映像を鑑賞することができない作品が17本ありますが、その中から「引越し夫婦」の脚本をご紹介します。

引越し夫婦
原作:菊池一平、脚色:伏見晃
監督:小津安二郎
1928年(昭和三年)公開

郊外の道
一人の男がさも忙しそうに自転車に乗って走って居る。彼は家具屋の集金員である。

その附近
集金員、「このあたりらしい」と言った様子で自転車から降りて汗をふきふき一軒一軒家を見ながら歩いて行く。

一軒の家の前
集金員やって来て、「やっと見付かった」と言った思い入れで自転車を路傍に立て、その家に近付く。
家の前に一人の婆さんが草むしりをしている。
集金員、その婆さんに声をかける。
婆さん、ショボショボした眼をしながら不審そうに集金員を見ながら腰を伸ばす。
集金員、受取りを出し乍ら、
“家具店ですが月賦金を頂戴に上りました”
と言う。
お婆さん、耳が遠くて聞こえない。
「え? え?」と耳を近寄せて幾度も聞きき直す。
集金員、苛々して大きな声で、
“家具店ですが月賦金を頂戴に上りました‼”
と叫ぶ。
婆さんの耳にはさして響かないらしく、未だ不明瞭な顔付きで集金員の手に持った受取を覗き込む。
月賦の受取証、藤岡様としてある。
婆さん、独り頷いて一方を指差す。
集金員、そちらを見る。
板塀に転居通知が貼ってある。
集金員、地団駄踏む。
“こんなに引越しばかりされたんじゃ俺の身体がもたん”
と悲壮な顔をして憤慨する。
婆さん、不思議そうに見て居る。
集金員、ブツブツ言い乍ら仕方なく所を手帳にうつしてから自転車に乗って去る。

薬屋の前
集金員、自転車を引張って疲れ切った様な足取りで歩いて来て店先へ立ち、藤岡の所を尋ねる。
(帳面を見て)店にいた薬屋の娘、春子、遊ぴに来ていた清一に、
“今度あなたの家の家作へ引越して来た人じゃないの?”
と言う。
清一、一寸考えてから「そうだそうだ」と頷いて、店先へ出て来ると集金員に道筋を教える。
集金員、お礼を言って去る。

藤岡の家の前
藤岡、表札を柱へ打ち付けている。

家の中
引越して間のない様子で家財道具が未だ雑然としている。
藤岡の友人が二人、細君の千代子を手伝って片付けている。
千代子、縁先へ出て来て夫の方へ、
“それが出来たらすみませんけど片脳油を買って来て下さいな”
と言う。


藤岡、気の無い様子で金槌など無雑作に放り出すと出かけて行こうとする。

家の前
集金員、居る。
集金員、急いで呼び止め、
“私も随分いろんな家を知って居ますが、お宅の様に引越しの好きな方は始めてですよ”
と言う。
藤岡、苦笑する。
集金員、早速月賦金の受取を取り出す。
藤岡、冷やかにそれを見て、
“家内にそう言って貰って呉れ給え”
と家の方を指差す。
集金員、「へい承知しました」と急いで家の方へ行く。


藤岡、薬屋を探しながらやって来る。

藤岡の家 庭先
集金員、縁先へ腰を下ろして、千代子と話をして居る。
千代子、お茶などすすめ乍ら、
“誰が好きこのんで引越しなんかするものですか。家相がよくないから止むを得ず引越すのよ”
と言う。
「成程」と頷いた集金員、改めて家を見廻して、
“此処は家相がいいようですね”
と言う。
千代子、一寸モヂモヂして、
“それはまだ判らないわ、引越したばかりですもの”
と言う。
集金員、すこぶる不審そうな顔。そして直き情けない顔付きになって、
“奥さん、追いかけて歩く私の身にもなって見て下さいよ。これでも生きて居るんですからね”
と言い乍ら、月賦金の受取証を取り出す。それは三枚である。
千代子、友人の方へ少し気を兼ね乍ら、それを受けとって見る。
そして不審そうに集金員の顔を見る。
「三枚あるじゃありませんか」
と言う。
集金員、笑って、
“先々月からお宅を探し廻って居るうちに三月分溜ったんです”
と言う。
千代子、一寸困る。

薬屋の表
大家の倅の清一、帰って行く。
其処へ藤岡がやって来て、看板を見て店へ這入って行く。
座蒲団など片付けて居た娘の春子、「いらっしゃいませ」と迎える。
藤岡、
“片脳油を呉れませんか”
と言う。
春子、片脳油の置場所を見たが無いので、一寸当惑した様子で、
“すみませんが今店の者が居りませんので、荷が解けないんでございますが”
と言って、店先の箱を指差す。
藤岡も当惑する。
箱をヂロヂロ見ていたが、
“私が開けて上げましょう”
と言う。
娘、一寸恐縮するが、藤岡が尚言うので道具を取出し始める。

大家の表
甚兵衛、二三様の草花を持って内から出て来て、何れへかへ出かけて行こうとして振りかえる。
帰って来た清一が、
“お父つぁん何処へ行くの?”
と聞く。
甚兵衛、不図思い付いて、
“丁度いい、お前に行って貰おう。今度引越して来た藤岡さんへこれを届けるんだ。庭が少し寂しいからな”
と言って清一に花を渡す。
清一、快く引受けて出かけて行く。

藤岡の家の表
千代子、集金員を送り出して来る。
集金員、麻胡麻胡する。
千代子、家の方へ気兼ねをしながら、
“月賦月賦って余り言わないで項戴。人聞きが悪いじゃないの”
と小言を言う。
集金員、恐縮してペコペコする。
千代子、いくらかの金を取り出す。
そして集金員に渡し、
“兎に角今日は一回分だけ上げるわ。あとは又来て頂戴”
と言う。
集金員、変な顔をする。
渋々それを鞄に納め、ふと思付いて、
“未だ二三日はお引越しにならないでしょうね”
と念を押す。
千代子、顔を緊張させる。
集金員、再び麻胡付き、曖昧な言葉を残して去る。
千代子、家の中へ戻りかかって、今度は夫の帰りが遅いのに不審を抱いた様子で道の方をあちこちと見廻す。
清一が草花を持ってやって来る。
千代子、しきりに道の方を気にして見ている。
清一、千代子に近付き、
“庭が寂しいようですから”
と言って草花を差し出す。
千代子、殆んど見向きもしない。
清一、もう一度話しかける。
千代子、漸く、それも型だけのお礼を言う。そしてせかせかした風で、
“この近くに薬屋がありましょうか知ら……”
と聞く。
清一、頷き道筋を教えつつ、千代子の落着かない様子を見て、
“お腹でも痛むんですか?”
と聞く。
千代子、それに答えず駈け出す様にして教えられた薬屋の方へ出かけて行く。
清一、呆然と見送り庭先の方へ這入って行く。

庭先
清一、藤岡の友人達に会釈して草花を下へ置き、
“大家から来たんですが、どの辺へ植えたらいいでしょうね”
と言う。
友人二人、「さあ」と言い乍ら出て来て千代子を探す。
清一、察して、
“奥さんは今薬屋へいらっしゃいましたよ”
と言う。
友人、「へーー」と顔を見合わせる。
友人の一人、何か考える。そして友達に、“どう考えても引越しの原因は家相ばかりじゃないらしいぜ”
と囁く。


激しい気色で千代子が薬屋を探して歩いて来る。
そして前方を見て急に足を止め、じっと見る。

薬屋の前
藤岡が春子と共に、一生懸命で片脳油の箱を開けている。
千代子、電柱の蔭に立って尚、夫の様子を見る。
汗を拭き乍ら釘抜きを持って働いている藤岡と、それを手伝う春子の愛想のいい素振り。
千代子の形相が物凄くなる。
歯を喰いしばった彼女は、突如クルリと向きを変えると、駈け出す様にして引返して行く。

薬屋の店先
藤岡と春子、漸く荷を解く。
春子、藤岡に片脳油を一瓶渡す。
藤岡、金を払いかけ金を探す。

藤岡の家
千代子、プンプンして帰って来て、その勢いで家へ這入ろうとして、不図考え付き、襟などつくろって静かに這入って行く。


藤岡、汗を拭き乍ら呑気な顔付きで帰って来る。

家の前
藤岡、家へ這入ろうとして垣根越しに庭先を見る。

庭先
千代子、清一に馴れ馴れしく寄り添い乍ら、草花を植えるのを手伝っている。

家の中
友人二人、千代子の変な態度に不審の眼。


藤岡、一寸厭な顔をする。
そして、威儀を正して這入って行く。

庭先
藤岡、空元気で這入って来て、友人達に、
“お蔭ですっかり片付いたね”
と家の中を見廻し、余り細君の方を見ない様にする。片脳油を出す。


千代子はこれを見てムカッとする。反射的に一層清一に愛想よく馴れ馴れしくする。
藤岡、つとめて愉快を装って、友人と談笑しようとするが、間がもてない。
千代子は清一が迷惑する位、益々馴れ馴れしくする。
藤岡、汗を拭いたり家具の置場所を変えて見たりするが格構が付かない。
友人二人も、変にパツが悪くモヂモヂする。
清一、草花を植え終る。
そして、藤岡に会釈する。
藤岡、変な会釈をする。
千代子と藤岡、顔を見合わす。
両方から突如ツカツカと近寄って睨み合う。
友人達、思わず顔を見合わす。
清一も不審そうな顔で二人を見る。
夫妻それに気付き無言で顔をそらす。
清一、変な気持ちで木戸から出て帰って行く。
夫妻、又激しい眼で見合う。
友人達、自分の帽子など手に取り上げて、
「今日はもう失敬するよ」
と言って逃げ腰になる。
藤岡、
“まだいいじゃないか
ゆっくりして行き給え”
と言って、友人の方へ向けた笑顔を、千代子の方へは渋面に変える。
友人達、益々居づらくなる。
尻ごみする様にして帰って行く。
夫妻二人の無言の対峠。


踏みにじられた草花。
破れて居る片脳油の瓶。
(翌朝)

端書
文面--先日は色々お世話様でした。所で今度の家ですがどうも又、家相が善くないらしいので困って居るんですが、何処かいい家は無いでしょうか。

電車の中
その端書を見乍ら顔を見合わせて呆れている、藤岡の友人二人。

電車が停る
友人A、Bに、
“一寸寄って見ようか”
と言う。
B、「止そう」と首を振る。
A、「じゃ俺も止そう」と立ちかけた腰を下ろす。
電車走り出す。
(そしてそろそろ日の暮れる頃)


藤岡、帰って行く。
と路傍に、沢山の人がたかっている。
藤岡、通り過ぎたが再ぴ戻って人の後から覗き込む。

人だかりの中
大きな碁盤に石を並べた五目屋が客の打ち込むのを待っている。
五目屋、石をパチパチやり乍ら、
“勝ったから名誉になる、負けたから不名誉になると言う様な問題ではございません。お好きの道の御研究です”
と言う。そして客を一渡り廻す。
藤岡、段々後から乗り出して来る。
五目屋、そそのかす様に、
“四と伸ばしますか、三と打ちますか、一目捨石をして四三の両天秤をかけますか”
と言ってニヤニヤと客を見る。
他の客と共に藤岡もつり込まれて来る。
と前にしゃがんで考え込んでいた男が石を取り上げる。
大家の倅、清一である。
清一、一目打って負ける。
藤岡、清一の顔を見て、「彼奴か、様見ろ」と言わぬ許りに痛快な顔をする。
客達ざわめく。
清一、金を払って去る。
藤岡、小気味よげに見送る。

停車場の前
千代子、ムシャクシャし乍ら待っている。傍らに集金員がかがんでいる。

五目屋
見物の中にいる藤岡、しきりに盤面を睨み付け、
“あれをこうやるとあいつがこう出る……と待てよ”
としきりに指でやって見る。
五目屋、藤岡に、「いかがです」と声をかける。
藤岡、一寸照れたが石を取り上げて打つ。五目屋、白石を持って、
“これは捨石四三の両天秤でございますが、こちらの四三をこう止めさせて戴きます”
と石を下ろす。
藤岡、続いて打とうとして、自分の負けである事に気付いたらしく、「あッそうか」と苦笑する。
金を払って引き上げる。

停車場
千代子、すっかり腹を立てプンプンして居る。帰りかける。
集金員、変な顔をして立ち上がる。
千代子、どんどん帰って行ってしまう。集金員、あっけに取られて見送る。

薬屋の前
藤岡、通りかかる。
店先を掃除して居た春子が会釈をする。
藤岡、立ち止る。
春子、愛想よく、
“先日は有難う御座いました”
とお礼を言う。
藤岡、「なあにあんな事」と少し得意である。
千代子、帰って来てこれを見てカッとする。
藤岡、春子と別れて帰って行く。
春子、見送る。
千代子、後から眼を光らせてついて行く。
千代子、通り乍ら春子を睨み付ける。
春子、「イー」と唇を出し店の中へ這入る。

藤岡の家
藤岡、帰って来て戸を開け様として、戸締りがしてあるので不審に思う。
裏口の方へ廻る。
千代子、プンプンしてやって来る。
藤岡、勝手口から家へ這入る。

家の中
鏡台などが出して取り散らかしてある。
藤岡、どっかり腰を下ろす。


千代子、裏口の方へそっと廻る。

家の中
藤岡、不図、衣桁にかかった千代子の着物を見る。碁盤に似た柄である。

五目の碁盤
藤岡、五目をやる気持でその着物をじっと、見る。


千代子、戸の隙間から夫の様子を窺う。

家の中
藤岡、千代子の着物を指差して、
“あいつがこう出たら俺はこう行けばいいのだ”
とやっている。


千代子、カッとしてしまう。狂気の様になって家へ駈け込もうとしたが、何を思ったか急に表の方へ駈け出して行く。

家の中
物音に不審を抱いた藤岡、勝手口の方へ出て見る。


藤岡、不審に思って表通りへ駈け出して見る。
向うへ走って行く千代子の姿。
藤岡、不審に思って、そのあとを追う。

大家甚兵衛の家の前
千代子、駈けて来て甚兵衛の家へ駈け込んで行く。
追って来た藤岡、これを見て思わず唇をかむ。
そして、ムカムカした様子で帰って行く。

大家の表
千代子、出て来る。続いて追いかけて出て来た甚兵衛が急いで呼び止め、
“どう言う訳でお引越になるんだか知りませんが、折角御縁があって御貸ししたのに十日もたたない中にお引越しになるなんて……。
となだめ様とする。
千代子、振り切る様にして帰って行く。
甚兵衛、驚いて見る。

藤岡の家(中)
藤岡、這入って来て考え込む。と人の足音に急いで振りかえる。
集金員がニヤニヤ笑って覗き込んでいる。藤岡、ムカッ腹で、
“今日なんか来たって駄目だぞ”
と怒鳴る。
集金員、吃驚する。


集金員が逃げ腰になっている所へ千代子が帰って来る。
そして、「邪魔ですよ」と集金員を除けて家の中へ這入って行く。
集金員、益々驚く。

家の中
対峠している藤岡夫妻。
お互いに息を弾ませ乍ら睨み合っている。藤岡が怒鳴る。
“引越すと言うのは俺の方で言う事だ”
千代子、負けて居ない。
“まあ、図々しい。
私の方で言う事じゃありませんか。
薬屋の娘なんかと何です”
と一矢を放つ。
藤岡、「何をッ」といきり立ち、
“誤解するなッ、お前こそ
大家の倅と……”
と言いかける。
それを遮って、千代子、
“何を仰るんです失礼な”
と口喧嘩はまさに腕力に変ろうとし、藤岡が先ず手近の鏡台を振り上げる。
其処へ、集金員飛び込んで来て、藤岡の振り上げた鏡台を奪う様にして取り上げ、傍へそっと置き、千代子を睨み付けている藤岡をなだめて、
“駄目ですよ、まだ九ヶ月分残って居るじゃありませんか、鏡台なんか振り上げちゃ”
と言う。
千代子が傍らの電気スタンドを振り上げる。
集金員、急いでそれも止めて取り上げ、
“壊すんでしたら月賦金を全部払ってからにして下さい”
と言う。
夫婦は無言で睨み合っている。
集金員、注意深く壊れそうな家具を片付ける。
千代子、睨み合っている中に堪えられなくなって畳の上に泣き伏す。
藤岡、悲壮な顔付で腕を組む。
そして集金員をヂロリと見る。
集金員、引込みが付かずコソコソと出て行く。
(翌日)

家の中
藤岡夫妻が黙々として家具の荷造りをしている。
藤岡、ムッツリした様子で千代子に、
“俺達はまるで引越しをする為に夫婦になった様なものだな”
とつぶやく様に言う。
千代子、ツンとして、
“あなたが悪いからです”
と言う。
藤岡、ムッとした風で、
“あれだけ説明しても未だ判らないのか”
と言う。
千代子、横を向いて、
“あなたの弁解なんか信用していられませんわ”
と言う。
藤岡「勝手にしろ」と言った風。
そして吐き出す様に、
“引越しの荷車を頼む金だってもう俺の財布にゃないよ”
と言う。
千代子、少しきっとなる。
“私が払うからいいわ”
と言うや箪笥から二三枚の着物を取り出して風呂敷に包み、畳を蹴立てて出ていく。
藤岡、「アーア」と伸びをし乍ら横になる。

質屋の前
たたんだ風呂敷を持ち、千代子が出て来る。


千代子、歩いて来てヒョイと見る。
薬屋の店先が賑やかで、幕などが張ってある。
千代子、不審そうな顔で通りすぎる。

藤岡の家
郵便配達が葉書を放り込んで行く。

家の中
藤岡、葉書を取り上げて見る。

葉書の文面
“前略
貴下御夫妻の適当する家相を持つ住宅は無人島以外には無之拝察仕候 其方面には今照会中に御座候 右御報告迄
呵々”

家の中
藤岡それを見て渋い顔をする。
其処へ千代子が帰って来る。
藤岡、今の葉書を千代子の方へ放る。
千代子、それを読んで口惜しがる。
(と玄関へ誰か来た様子)
千代子、急いで立って行く。
間もなく紋付袴の甚兵衛を案内して這入って来る。
藤岡、吃驚する。
甚兵衛、丁重に、
“実は今日倅がかねて約束のありました薬屋の娘を嫁に貰いますので御願いが出来ればお引越しを一日お延し願いたいと思いましてな”
と言う。
藤岡夫妻、「へー」と呆気に取られる。
お互いに顔を見合わせる。
甚兵衛、なお辞をひくくして、
“大変勝手なお願いですがこれも縁起ものでございますから是非共一つ御承諾を……”
と言う。
夫婦は期せずして、「承知致しました」と答える。
甚兵衛喜んで帰って行く。
藤岡夫妻、呆然とする。
と千代子、モヂモヂしていたが、
“私、着物を取りかえして来ますわ”
と言う。
藤岡、優しく頷く。そして、
“ついでに大家さんへ寄ってお祝いと一緒に引越しを思い止った事を言っておいで”
と言う。
千代子、頷き鏡台に向って髪など直す。
二人、顔を見合わせて微笑。

藤岡の家の庭先
清一が草花を植えている。
縁先で千代子と丸髷姿の春子が話をしている。
家の中では藤岡と甚兵衛が五目並べをやっている。
それを横から集金員が覗いている。
甚兵衛が、
「しまったしまった」と頭をかく。
一同そちらを見て微笑する。

(昭和三年九月十一日製本)

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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