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フィルム消失作品による朗読コンサートの企画
小津安二郎監督は生涯に54本の作品を遺しましたが、その内訳はサイレントが35作品、トーキーが19作品です。しかし、サイレントの中にはフィルムが消失してしまって、二度と映像を観ることができない作品が17本あります。
さらに、フィルムのみならず脚本さえ残っていない作品があって、つまりフィルムも脚本もない、再現不可能な作品が6本もあるのです。それは「懺悔の刃」「若人の夢」「女房紛失」「カボチャ」「会社員生活」「エロ神の怨霊」の6作品です。
脚本が残っている11作品は、朗読劇やリメイク版の制作など、将来何らかの形で再現される可能性があります。実は朗読コンサートの題材として、フィルム消失作品のリメイクを計画しているところです。来年以降、フィルム消失作品による朗読コンサートを開催したいと考えています。
サイレントからトーキーへの移行期に、サウンド版というものが制作されたことがありました。サウンド版には、サイレントの映像に音楽だけが付いており、セリフは含まれていません。
小津作品には、4本のサウンド版があるとされています。「また逢ふ日まで」(昭和7年)、「東京の宿」(昭和10年)、「箱入り娘」(昭和10年)、「大学よいとこ」(昭和11年)の4作品ですが、「東京の宿」以外の3作品はフィルムが存在しないため、サウンド版であることの確認ができません。
唯一残っている「東京の宿」は、作曲と指揮が伊藤宜二、演奏は松竹蒲田楽団、音楽監督に堀内敬三の名前が記録されています。戦前の松竹には専属の楽団があって、松竹蒲田楽団の他、松竹和洋合奏団、松竹管弦楽団、松竹交響楽団と記載されている場合もあります。
戦後、松竹大船撮影所音楽部の名称に変わってからは、専属の楽団を置くことはやめ、吉澤博の采配によって撮影の都度、作曲家や演奏家を集める方式になりました。現在の音楽プロデューサーのような役割を吉澤が担っていたのです。
現存する唯一のサウンド版「東京の宿」のごく一部ですが、以下より音源をお聴きいただけます。