晩春
原節子 笠智衆
晩春は、小津安二郎第42作目の監督作品である。
1949年(昭和24年)に公開され、小津自身は46歳であった。
晩年、「自作を語る」の中では、次のように述べていた。
「「箱入り娘」以来、野田さんと久しぶりに顔を合わせた写真だ。
ライターと監督が一緒に仕事をする時、体質的にも似た者同士でないと、うまく行かないことが多いね。
一方が寝坊で、一方が早寝だというようでは、バランスがとれなくて、却って疲れちゃう。
その点、野田さんや斎藤良輔君とは、酒も寝起きの時間もよく合うんだな、こりゃ大事なことだと思うよ。
僕と野田さんの共同シナリオというのは、勿論セリフ一本まで二人して考えるんだ。
しかしセットのデテイルや衣裳までは打合せないんだがね、それでいて二人の頭の中のイメージがピッタリ合うというのかな、話が絶対にチグバグにならないんだ。
セリフの言葉尻を「わ」にするか「よ」にするかまで合うんだね。
これは不思議だね。
いつか里見さんに話したら、ゴンクール兄弟が小説を書くのもそれか、と合点されたよ。
勿論意見の違いは出来るよ。
両方とも頑固だから、仲々妥協しないね。」
(引用:「自作を語る」)
■ストーリー
北鎌倉に住む大学教授曾宮周吉は、早くに妻を亡くし娘の紀子と二人で暮らしていた。父を一人にしてしまうことが心配な紀子は、いつのまにか適齢期を過ぎようとしていた。そのことが気がかりで仕方がない周吉と叔母のマサは、紀子にふさわしい結婚相手を探していた。
マサは紀子に見合いの話を持ちかけるが、紀子は周吉との生活を続けたいため、結婚する気持ちにはなれなかった。そこで、周吉とマサは周吉に再婚話が出ていると偽り、紀子に結婚を決意させようとする。しかし、紀子の心中は父が後妻を娶ることへの嫌悪感と、父と離れなくてはならない寂しさで揺れ動いていた。
一週間後、紀子はマサの持ってきた縁談に承諾した。最後に父娘で京都旅行へ出かけた。ここでも父と離れる寂しさから再び気持ちが揺らぐ紀子だったが、周吉から静かに結婚生活への心構えを説かれ、結婚への決意を固めるのだった。
そして、無事紀子の結婚式を済ませた周吉は、誰もいない家へ戻ってきた。誰よりも紀子の幸せを願っていたはずの周吉だが、独りきりで感慨に浸るのだった。
笠智衆・・・曾宮周吉
原節子・・・紀子
月丘夢路・・・北川アヤ
宇佐美淳・・・服部昌一
桂木洋子・・・小野寺美佐子
杉村春子・・・田口マサ
青木放屁・・・田口勝義
三宅邦子・・・三輪秋子
三島雅夫・・・小野寺譲
坪内美子・・・小野寺きく
高橋豊子・・・林しげ