宗方姉妹
田中絹代 高峰秀子
宗方姉妹は、小津安二郎第43作目の監督作品である。
1950年(昭和25年)に公開され、小津自身は47歳であった。
晩年、「自作を語る」の中では、次のように述べていた。
「大仏さんも《これは君達の「宗方」だ》と言われてね、本はわりあい楽に書けた。
はじめての新東宝も昔知ってた連中がよく協力してくれて楽しいものだった。
しかし、正直な処、原作ものはどこかやり難いね。
つまり、原作者が自分のイリュージョンで書いているものを、既成スターにあてはめて描くわけだろう、むずかしいよ。
大体僕は本を書くとき、それをやる俳優のリミットや性格にあてはめて書いて行くんだ。
その方が俳優も楽だしね。
昔は新人を苦労して使ったが、今ではうまい人にうまくやって貰いたくなってね。
何も持たない人で苦労する元気はなくなったね。
結局うまいまずいより、人間のいいのがいいんだね。
一寸うまいのにうまがられるのが一番困る。
いい人は次の写真にも何とかして出て貰いたくてね、無理して役を作っちゃったりする。」
(引用:「自作を語る」)
■ストーリー
妻を亡くしてから京都で暮らす宗方忠親は、末期癌に侵されており余命が一年足らずしかなかった。節子、満里子の姉妹は、東京から父の元へと向かった。忠親には、東京で暮らす二人の娘のことだけが気がかりで仕方がなかった。
自由奔放で社交的な満里子は、忠親を訪ねてきた旧知の田代宏と再会し、神戸まで遊びに出かけた。田代は昔姉の節子と付き合っていたが、節子は満里子とは正反対の性格で、自分の思いを伝えられないまま、現在の夫である三村亮助と結婚してしまったのだった。
姉妹は東京へ戻ったが、節子はバーの経営が上手くいかないうえ、仕事もせず節子に冷たい態度を取る夫亮助のことで悩んでいた。節子は店のことを田代に相談したが、それが気に入らない亮助は節子に暴言を吐いた。節子と亮助の関係は悪化し、ついに節子は店をやめることにした。
そして、二人に離婚話が持ち上がると、激昂した亮助は節子に暴力を振るってしまう。節子は再び田代の元へ相談に行くが、これを妬んだ亮助はやけ酒を呑んだ挙句、心臓麻痺を起こして急死してしまった。
満里子は、これで新しい生活が始められると言って節子を励ましたが、節子は亮助の死が自分のせいのように思えて気持ちは沈んだままだった。節子の身を案じた田代は、思い切って節子に結婚を申し込んだ。しかし、節子はその申し出を断り、古い価値観に縛られてきた生き方を改め、新しい人生を目指そうと決心した。
田中絹代・・・宗方節子
高峰秀子・・・満里子
上原謙・・・田代宏
山村聡・・・三村亮助
高杉早苗・・・真下頼子
堀雄二・・・前島五郎七
坪内美子・・・藤代美恵子
斎藤達雄・・・内田譲
笠智衆・・・宗方忠親
藤原釜足・・・「三銀」の亭主
河村黎吉・・・「三銀」の客
堀越節子・・・「三銀」の女中
千石規子・・・東京の宿の女中