お茶漬の味
佐分利信 木暮実千代
お茶漬の味は、小津安二郎第45作目の監督作品である。
1952年(昭和27年)に公開され、小津自身は49歳であった。
晩年、「自作を語る」の中では、次のように述べていた。
「これは戦争中に書いたシナリオだが、当時検閲のためにお蔵になっていたものを、そのままにしておくのはもったいないので引き出して来た作品です。
もとのシナリオでは主人公が出征することになっているんだが、時代が変ったので南米へ行くように書きかえた。
このため、ドラマの転換が弱くなってしまったことは事実です。
ただぼくは、女の眼から見た男――顔形がどうだとか、趣味がいいとか言う以外に、男には男のよさがあるということを出したかった。
しかし、あまり出来のいい作品ではなかったな。」
(引用:「自作を語る」)
■ストーリー
妙子は、佐竹茂吉と結婚してもう7、8年は経過しただろうか。茂吉は会社では重役だが、もともと田舎者で家庭では愚鈍な夫にしか思えなかった。今度も、妙子は茂吉には内緒で女友達4人と伊豆の修善寺へ遊びに出かけていた。
妙子の姪節子も一緒だったが、妙子たちが夫の悪口を言う姿を見て幻滅し、自分はお見合結婚だけはご免だと言った。実際、節子は歌舞伎観劇のお見合の席から逃げ出してしまい大騒ぎになった。妙子はそのことで節子を叱ったが、茂吉は「無理やり結婚させても、自分たちのような夫婦がもう一組できるだけだ。」と言って節子を擁護するのだった。
茂吉の言葉に傷付いた妙子は、それから茂吉とは口を利かなくなった。不満を抱える妙子は、黙って神戸の友人の所へ遊びに行ってしまう。その間、突然南米ウルグアイへの海外出張が決まった茂吉は、何とか妙子へ連絡を取ろうとしたが間に合わず、知人に見送られて旅立った。
だが、妙子は家へ帰ってから急に夫のことが心配になり、初めて茂吉がいない寂しさを感じるのだった。ところが、夜遅くなってから、思いがけず茂吉が家へ戻ってきた。何でも、離陸後に飛行機が故障して、途中で引き返してきたのだという。そのため、茂吉の海外出張も出発が一日延びたのだった。
妙子はこれまでのことを詫びると、二人は深夜にお茶漬けを食べながら仲直りをした。翌日、妙子は一人で茂吉の出発を見送った。茂吉と妙子は、ようやく夫婦というものの味を噛み締める思いがした。二人とも、寂しい気持ちよりもお互いをわかり合えた喜びを感じていた。
佐分利信・・・佐竹茂吉
木暮実千代・・・佐竹妙子
柳永二郎・・・山内直亮
三宅邦子・・・山内千鶴
津島恵子・・・山内節子
設楽幸嗣・・・山内幸二
鶴田浩二・・・岡田登
淡島千景・・・雨宮アヤ
十朱久雄・・・雨宮東一郎
上原葉子・・・黒田高子
笠智衆・・・平山定郎
石川欣一・・・大川社長
望月優子・・・しげ