斎藤高順の演奏による小津映画音楽ピアノ作品集

父高順の記念すべき最初の映画音楽の仕事は、1953年(昭和28年)公開の「東京物語」でしたが、生涯最後の映画音楽の仕事は1993年(平成5年)公開の「小津と語る Talking With OZU」でした。奇しくも、小津監督作品から始まり、小津監督を描いた作品が最後の仕事になりました。

警視庁音楽隊長を退職した父は、少しの間尚美音楽短大教授と聖徳大学講師を務めましたが、60代前半にはほぼリタイヤし、自宅でフリーの作曲家へと戻ったのでした。毎年行われていた小津会へは、ほぼ参加していたのではないかと思いますが、父の中で小津作品への強い思い入れが蘇ったのは、やはり小津監督生誕90年(1993年)の頃からではないでしょうか。

晩年、病気や事故の後遺症に悩まされ、気力も体力も衰えた父にとって、小津映画音楽のピアノ作品集と「東京物語」の弦楽五重奏曲を、小津監督生誕100年(2003年)までに仕上げ、公表することが人生最後の目標だった可能性が考えられます。

チェロ奏者の叔父(鶴吉)に依頼した「東京物語」弦楽五重奏曲の浄書が、父の手元へ渡ったのはちょうど小津監督生誕100年にあたる2003年でした。その頃には、小津映画音楽ピアノ作品集の楽譜も仕上がっていたのではないかと思います。

しかし、残念ながらこれらの作品を世間へ公表する気力も体力も、最早父には残されていなかったのです。それから間もなく、翌2004年の春に父はこの世を去りました。

そのまま、父が遺した小津映画音楽のピアノ作品集と「東京物語」の弦楽五重奏曲の存在は、我々遺族に知られることもなく、関心を持つ者もなく、すっかり忘れ去られてしまいました。それから10年ほどが過ぎた2015年の秋、偶然私が父自身が弾く小津映画音楽のピアノ作品集のカセットテープを発見したことから、事態は動き出すことになったのでした。

カセットテープに録音されていた、父高順の演奏による小津映画音楽のピアノ作品集全曲を公開します。録音状態は良くありませんが、貴重な音源ですので是非お聴きになってみてください。

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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