音楽の友クラブ会報「Phoenix」より|クラブ会員の近況・ニュース

以下、斎藤高順の投稿を抜粋しました。

今年は歌曲の年(1991年No.18)

つい先頃、音楽之友社から初の拙作歌曲集「春のなだれ」が刊行されましたが、今年は私にとって歌曲と大変かかわりの深い年となりそうです。
5月24日に砧区民会館ホールで催された「世田谷うたの広場コンサート」では新作2曲が岡村喬生氏のソロと林光氏のピアノで初演されました。
また上野で同級のテノール、岩崎成章氏のリサイタルでは歌曲集「春のなだれ」から5曲の演唱が約束されました。
詩と音楽の会では山下千江さんの詩に、童謡協会では宮中雲子さんの詩に、それぞれ作曲が終わり、コンサートでの発表が楽しみです。

近況(1992年9月No.22)

久しぶりに詩人の薩摩忠氏からの電話で宮城県の気仙沼にある東陵高等学校の応援歌の作曲をして貰えないかと言う電話があり、勿論薩摩さんが作詩をされると言う事で、喜んで2つ返事で承諾しました。
薩摩さんとは以前毎週新橋のビヤホールでお会いする度に1篇ずつ詩を貰い3ヵ月足らずで10曲の花を主題にした合唱曲集「トパアズの旋律」を完成させたり、その他小品も何曲かご一緒に作った事があったのです。ところがその後薩摩さんは体調を少し崩されてビヤホールにお顔を見せなくなり、その為ご一緒に曲を作る機会が少し遠ざかって居た所だったのです。
応援歌の詩が出来次第どこかでビールを飲み曲の相談をする約束をし、今から楽しみにしている所です。
9月25日には新しい日本の歌で初演する女声合唱曲「若草山の風色」(早竹青秋詩)が予定されて居ります。
10月1日には一人娘が椿山荘で結婚式を挙げる予定で親父としては複雑な心境です。
現在日本の昔話「かぐや姫」を8曲程のピアノ曲でストーリーに従って順序立てた組曲を目ざして作曲中です。又そのスケッチは仕上がりましたが、ロマンチックな曲に混ざって複調の曲等も入る結構面白い曲集になりそうです。スケッチを見た義妹の斎藤龍(鶴見大学教授)が曲に合わせたお話まで書いて呉れました。11月頃迄には作曲を完成させる予定です。しかし予定は未定と言われますからどうなる事でしようか。

近況など(1995年No.33)

前号でも書かせていただいたように、今年は歌曲や合唱曲の新作をあちこちで発表させていただく機会が多く、とても有り難く思っていました。
新作に加えて、以前に作曲した作品までとり上げて下さる事が相次ぎ、ますます嬉しく思っています。
今年の初め頃、東亜音楽社から「ザ・ファンファ—レ1」「ザ・ファンファーレ2」が出版されました。沢山の曲の中に、私の新作9曲、名曲からの編曲6曲のファンファーレが収められました。
同じく東亜音楽社から「世界のマーチ名曲集Vol1」が出版され、世界中のマーチから10曲が選ばれているのですが、その中に拙作のマーチが1曲入っており、「ブルー・インパルス(日本)」と紹介されていたのには感激しました。年末には、「世界のマーチ名曲集Vol2」が出版されるとの事ですが、その中にも拙作のマーチ「輝く前進」が加えられたとのことで、今から出版が待たれます。この会報が皆様のお手許に届く頃には、楽器店に並べられているでしょう。
9月9日には多摩センターのパルティノン・ホールで、進藤潤隊長指揮の航空中央音楽隊によるコンサートで私が以前作曲した吹奏楽作品が特集されたことも忘れられません。次にプログラム順に記します。

1.行進曲・シルバーウィング(銀翼)
2.交響詩・オンリ一・ワン・アース(かけがえのない地球)
3.組曲・エメラルドの四季(若狭湾の春/沖縄の夏/十和田湖の秋/オホーツクの冬)
4.チューバの恋人(チューバ独奏と吹奏楽)
5.マーチング・エスカルゴ(ホルン四重奏と吹奏楽)
6.映画「秋刀魚の味」より主題曲とポルカ(小津安二郎監督の遺作につけた音楽を吹奏楽曲に改作したもの)
7.行進曲・輝く銀嶺(北海道の俱知安で行われた冬季国体の入場マーチになった後、吹連主催のコンクールの課題曲にも使用された)
8.行進曲・ブルー・インパルス(アクロバット飛行隊を讃えた曲)

以上がその演奏曲目です。当日の演奏者は私が音楽隊長を務めていた頃(昭和47〜51年)のメンバーは三分の一にも足りない程でしたが、多くの新しい優秀な隊員たちの演奏は実に見事で、迫力は充分に輝き、旋律は美しく歌い上げ、盛大な拍手を浴び、私自身も多いに満足しました。
しかもこればかりではありません。進藤隊長の指揮、航空中央音楽隊の演奏で私の吹奏楽作品だけのCDを作る予定で、すでに録音にも入っており、来年には発売されるとの事です。
どの曲が選ばれたのか、何曲録音されるのか、私はまったく知りません。しかしこんなに嬉しいこと、こんな楽しみな事はありません。

信時潔先生の想い出(No.34)

今年(平成八年)のー月十八日に行われた「音楽の友クラブ新年会」で色々な方と楽しく歓談しましたが、中目徹さんとのお話の中に恩師信時潔先生との想い出が始まり、レッスンの最中に生徒の作品をピアノで弾き乍ら興に乗り出すと、先生の唇から「よだれ」(或いは鼻汁)が鍵盤に垂れ、訂正して下さった譜面を生徒に弾かせるのですが鍵盤がぬるぬるして何とも気持ちが悪いのに、曲が見違える程良くなり、驚いたり感動したりした話で盛り上がり、大笑いの連続でした。
それがキッカケで先生にお世話になった事等を色々想い出しましたので、今回はそれを記録したいと思います。
昭和十八年(戦争も末期の頃)四月に東京音楽学校(現東京芸術大学)作曲科に入学したのは四人(故芥川也寸志、故奥村一、依田光正、斎藤高順)で芥川、依田の二名は下総皖一先生に、奥村と私は信時潔先生に作曲の授業を受ける事になりました。四人とも一緒に受講する和声法、対位法、管弦楽法等は橋本國彦先生や細川碧先生に教わる時間がありましたので、信時先生のレッスンでは作品を見て貰う事だけでした。
先生は明治中期のお生まれで、大きな体格といかにも明治人の風貌を備え恐そうに見えましたが、大変優しいお声で、親切に指導してFさり、前に述べた様に、一音直されただけで見違える程よい曲になるので本当に素晴らしいレッスンでした。
先生はプライベートの面でも大層面倒を見て下さり、卒業後新作の発表演奏会にご案内すると必ずお見えになり批評して下さいました。
昭和三十年の春私が霊南坂教会で結婚式を挙げた時も快くご夫妻で媒酌人をつとめて下さり、我が家にもお出で下さいました。又その結婚式でお会いになった映画の小津安二郎監督とも親しくなられ、後に小津監督が芸術院賞を貰われたり、映画監督初の芸術院会員になられた時も大変喜んで下さいました。勿論信時先生は既に会員で居られましたが。
昭和四十年三月私の四男が誕生した時、潔と命名する事を快く賛成してくださいました。その潔君も今やオーボエ奏者になって活躍中です。
話が戻りますが、戦後間もない頃、先生は日本音楽著作権協会を退会されましたが、理由を伺った所、御作の「海行かば」が放送等で使われる度に著作権使用料が届くので、戦争で亡くなった方々に申し訳ないとの事でした。他にも名曲を沢山お作りになって居られるのに…。
使用料の金額をいつも気にしている私共には信じられない事ですが…。昭和四十年八月暑い盛りに他界されました。私にとって信時先生はかけがえのない大切な先生です。

近況〜新作の発表等(1996年No.36)

前号で只今作曲中と紹介した歌曲「ナブルの空へ」がようやく仕上りました。ナブルとはイスラエルにある都市の名で、作詞された笹原三津子さんが、以前訪ねられた時の美しい自然や風物、出会った若者たちへの熱い想いや友情、それ等を秘めた美しい感動的な詩。
作曲に当っては明るく希望を込めて書き上げました。曲はほのぼのとした変イ長調で、歌のパー卜とピアノ伴奏で約3分少々です。平成8年11月1日(金)新宿の朝日生命ホールで本年度の新・波の会定期演奏会で初演が予定されて居りますが、出演して下さる方々はまだ決まって居りません。
同じく11月の終り頃初演される器楽曲が早ばやと完成しました。これは作曲家協議会が企画したコンサー卜で、日時は平成8年11月23日(土・祝)の午後2時15分からで、会場は懐かしい上野公園内の奏楽堂です。私が音楽学校(現・東京芸大)に在学中、今から50数年も前の事ですが、自作のピアノ曲を弾いたり、新作の室内楽作品を演奏して貰ったりした当時は校舎内にあった想い出深い奏楽堂です。
曲はチェロとコントラバスの二重奏曲で、曲名は「ファンタジック・ディヴェルティメント」です。ジャンルにとらわれない自由な発想で作曲しましたが、一応三楽章に構成しました。内容を次に示しましょう。

第一楽章 プロローグ・アレグロ・ヴァルス
第二楽章 ロマンス・ポルカ
第三楽章 イントロダクションとアダジオ・エピローグ

以上ですが、バロック風から無調迄をロマンチックに組み合わせた楽しい音楽にしたいと思って作曲しました。こちらは演奏者も決まり、すでに楽譜もわたしました。
コントラバスは私の三男で芸大出身の斎藤順君で、彼の友人山本裕康氏を紹介して貰いチェロの演奏をお願いしました。
久々の器楽曲で、しかも私にとっては初めて作曲したチェロとコントラバスの二重奏曲なので、初演が待たれますし、今から楽しみです。
又この作品を素材にして、低音の金管アンサンブル曲も書いてみようか、とも考えて居ります。

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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