生きてはみたけれど 小津安二郎伝

「生きてはみたけれど 小津安二郎伝」が公開されたのは1983年(昭和58年)でした。ちょうど、小津安二郎監督が亡くなってから20年後にあたります。小津監督の偉大なる足跡については今さら言うまでもありませんが、全54作品中キネマ旬報のベスト・テンに入選した作品だけを列挙すると、次の通りになります。

第1位 生れてはみたけれど 1932年(昭和7年)
第1位 出来ごころ 1933年(昭和8年)
第1位 浮草物語 1934年(昭和9年)
第1位 戸田家の兄妹 1941年(昭和16年)
第1位 晩春 1949年(昭和24年)
第1位 麦秋 1951年(昭和26年)
第2位 父ありき 1942年(昭和17年)
第2位 東京物語 1953年(昭和28年)
第3位 お嬢さん 1930年(昭和5年)
第3位 東京の合唱 1931年(昭和6年)
第3位 彼岸花 1958年(昭和33年)
第4位 一人息子 1936年(昭和11年)
第4位 長屋紳士録 1947年(昭和22年)
第5位 秋日和 1960年(昭和35年)
第6位 早春 1956年(昭和31年)
第7位 風の中の牝鶏 1948年(昭和23年)
第7位 宗方姉妹 1950年(昭和25年)
第8位 淑女は何を忘れたか 1937年(昭和12年)
第8位 秋刀魚の味 1962年(昭和37年)
第9位 東京の宿 1935年(昭和10年)

サイレント6作品、トーキー14作品の計20作品が、キネマ旬報のベスト・テンにランクインしていることが分かります。現在、世界で最も評価の高い「東京物語」が、当時は第2位だったことは興味深い事実です。また、サイレントの「浮草物語」が第1位に輝いているのに、一方トーキーの「浮草」はベスト・テン圏外というのは少し意外な気がします。

「東京物語」が公開された頃(昭和28年)から、日本は高度経済成長の時代に突入し、日本人の生活様式も価値観も劇的に変化しつつありました。しかし、小津監督が描く日本人の姿は、遺作となった「秋刀魚の味」まで少しも変わることはありませんでした。

本作品は、小津作品の名作の中から選り抜きの名シーンを抽出し、小津監督と直接関わりのあった俳優やスタッフ、文化人等の証言を交え、小津安二郎60年間の生涯を振り返るドキュメンタリー作品となっています。登場する人たちは、岸恵子、司葉子、有馬稲子、淡島千景、岡田茉莉子、杉村春子、桜むつ子、東野英二郎、笠智衆、中村伸郎、須賀不二男、三上真一郎、木下恵介、今村昌平、佐々木康、新藤兼人、斎藤良輔、厚田雄春、浜田辰雄、今日出海、横山隆一、川喜多かしこ、ドナルド・リチー、佐藤忠男、中井貴恵、野田静(野田高梧未亡人)、野村八重子(伏見晃未亡人)、小津新一(兄)、小津信三(弟)、山下とく(妹)など、幅広く多方面に及びます。

本作品に登場した人たちの多くも、今や故人となってしまいましたが、時代が移り変わっても決して色褪せることのない小津映画の魅力を再認識できる作品です。また、本作のために書き下ろした斎藤高順の音楽は、かつての小津映画を彷彿とさせる小津調サウンドそのものであり、特にサイレント作品の映像に付けた音楽は秀逸な出来栄えではないでしょうか。

ナレーション:城達也
スクリプター:岸田今日子、中井貴恵
音楽:斎藤高順

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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