小津と語る Talking With OZU
小津安二郎監督の生誕90周年(没後30年)にあたる1993年に公開された本作品は、リニューアルプリントされた「東京物語」と同時上映されたドキュメンタリーです。
小津作品を敬愛して止まない海外の有名監督に、小津監督及び小津映画に対するオマージュを熱く語っていただくという趣旨の内容でした。スタンリー・クワン(香港)、アキ・カウリスマキ(フィンランド)、クレール・ドゥニ(フランス)、リンゼイ・アンダーソン(インド)、ポール・シュレイダー(アメリカ)、ヴィム・ヴェンダース(ドイツ)、ホウ・シャオシエン(台湾)ら7人の映画監督が、好きな小津作品や影響を受けた小津作品、小津映画のスタイルや小津監督への思いなどについて語っています。この他にも、シンガポールや韓国でも小津映画の人気は絶大で、もはや世界中の映画監督、映画ファンが小津作品に魅了されていると言っても過言ではないでしょう。
一方、日本国内での小津人気はどうだったのでしょうか?一部の根強い小津ファンを除くと、これまで小津映画への評価は決して良いものばかりではなかった様に思います。海外での評価が高まるにつれ、国内でも遅ればせながら、小津再評価の機運が高まってきた感は否めません。
海外の小津ファンは、我々日本人が見落としている、あるいは忘れてしまった日本人の美徳や禅の思想などを小津映画の中に見出しているようです。現在を生きる我々にとって、小津映画に描かれている日本人は、もはや失われてしまった古き良き日本人の姿なのかも知れません。それは、小津監督へのオマージュを捧げるために制作されたはずの本作品が、小津映画とは程遠いクオリティの作品になってしまったことにも表れているように思います。例えば、音楽に斎藤高順のクレジットはありますが、なぜおかしなアレンジのシンセサイザーによる音楽を付けたのでしょうか?また、カメラワークや画面構成など、小津監督が徹底的にこだわった点を再現しようとしなかったのでしょうか?肝心の制作サイドに、小津作品へのリスペクトが少々欠けていたようで残念に思います。
出演:
スタンリー・クワン
アキ・カウリスマキ
クレール・ドゥニ
リンゼイ・アンダーソン
ポール・シュレイダー
ヴィム・ヴェンダース
ホウ・シャオシェン
小津安二郎
音楽:斎藤高順