近況 ~小津安二郎監督・生誕90年~
『むかしの仲間』 第15号 1994年春 斎藤高順
昨年(平成5年)の12月12日が、小津安二郎監督の生誕90年で、しかも没後30年とのことで、いろいろなイベントが計画された。昭和28年製作の松竹映画『東京物語』から遺作となった昭和38年の『秋刀魚の味』迄殆どの音楽を担当した私にまでその波が押し寄せてきて、講談社刊の『小津安二郎新発見』という本が出版されるに当たっては、私へのインタビュー記事が写真も入れて6頁にも掲載された。
NHKの衛星放送では『現代に蘇る小津安二郎』が放映され、その録画に当たって私宅にもインタビューにカメラマンその他6人も訪れ、2時間以上も取材され、40年以上も前に作曲した『東京物語』のテーマをピアノで弾かされたりした。うろ覚えで弾いたところが、テレビにも出て見ながら冷や汗を流した。しかしピアノに引き続いて映画が写され、キイ(調子)が合っていたのでホッとした。
私が作曲した映画のテーマ曲などが新たにCDとして発売され中々の売行きだとの事。また産経新聞の江東版からも記者等4人ほど我が家に来られ、その記事が誕生日で命日の12月12日の朝刊に載り、私が『東京物語』のポスターを広げている写真が原節子さんや笠智衆さんと一緒に掲載された。
年が改まってやれやれと思ったのも束の間、正月早々松竹の関係から保存版の録画を撮るとの事で、都内のスタジオに呼び出され、ここでも2時間程色々とインタビューを受けたり取材されたりした。出来上がり次第ビデオテープに収めて送ってくれるとの話だったが、まだ届いていない。
小津ハマさん(小津安二郎義妹)と自宅にて