小津映画の劇伴「東京物語」

父高順は、「東京物語」が初めての映画音楽の仕事でした。当時、27歳だった父は前年まで横浜の精華小学校で代用教員として勤める傍ら、ラジオの仕事をいくつも掛け持ちするなど、多忙な日々を過ごしていました。

NHKラジオの仕事を通じて知り合った声楽家今村桜子さんの紹介で、松竹大船撮影所音楽部の責任者だった吉澤博氏と再会し(大学卒業後に一度だけお会いしていた)、吉澤さんの推薦で小津安二郎監督と面談することになりました。

小津監督は最初の台本が仕上がった時点で、音楽の入る場所は全て決まっており、最終稿まで一切変わることはなかったそうです。ただ、具体的な指示は特に与えられなかったので、父は撮影現場へ足繁く通い、台本と役者の演技を見ながら曲の構想を練っていきました。

小津監督がどのような曲をイメージされているのかを探るため、お酒が全く飲めない吉澤さんにも付き添ってもらい、しばしば小津組の飲み会へ顔を出しました。そこで、カメラの厚田雄春さんが小津監督の音楽の好みをよくご存じであること知り、厚田さんから小津監督が好きな欧米の流行歌などを教えていただきました。

また、音楽の入る場所は分っていましたが、具体的にどのくらいの尺になるのかハッキリしなかったので、編集の浜村義康さんに尋ねると、コマ数からシーンの秒数を割り出して、曲の長さを秒単位で指示していただき驚いたそうです。

そして、効果音も含め映画音楽全般を取り仕切っていたのが吉澤さんで、全ての音楽は吉澤さんの意見を採り入れながら作曲しました。吉澤さんは、音楽面については絶対的な権限を持っており、松竹大船撮影所の中では小津監督に意見を言える数少ない一人でした。

厚田さんや浜村さん、そして吉澤さんらベテラン勢に支えられ、初めての映画音楽の仕事「東京物語」はどうにか完成まで漕ぎ着けることができました。それでは、父にとって記念すべき映画音楽第一作目「東京物語」の劇伴をお聴きください。

sight-and-art.org

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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