芦川いづみ再発見

昭和30年代、40年代頃の日活作品が、少しずつDVD化されています。父は、松竹で小津安二郎監督の映画音楽を7作品担当した他、日活で吉村廉監督8本、阿部豊監督7本、斎藤武市監督5本、滝沢英輔監督4本など、40作品ほどの映画音楽を手掛けました。

松竹では原節子、司葉子、岩下志麻、山本富士子、有馬稲子などの人気女優と仕事をしましたが、日活でも吉永小百合、浅丘ルリ子、南田洋子、月丘夢路、新珠三千代など華やかな美人女優たちと仕事ができる幸運に恵まれました。

中でも、最も多くの映画音楽に携わった女優が芦川いづみでした。芦川いづみが5作品、浅丘ルリ子、南田洋子、月丘夢路の3人が4作品と続きます。

父が映画音楽を手掛けた芦川いづみの出演作品は、次の通りです。

「孤独の人」  西河克己監督 昭和32(1957)年 原作:藤島泰輔
「白い夏」   斎藤武市監督 昭和32(1957)年 原作:新田次郎
「あじさいの歌」滝沢英輔監督 昭和35(1960)年 原作:石坂洋次郎
「いのちの朝」 阿部豊監督  昭和36(1961)年 原作:武者小路実篤
「しろばんば」 滝沢英輔監督 昭和37(1962)年 原作:井上靖

当時の日活は、小説を題材とした文芸作品を中心に制作していましたが、暖かみがあり、落ち着いた雰囲気を醸し出す父の音楽は、映像に品格を与え、文芸作品らしい格調の高さを効果的に演出していたように思います。

芦川いづみは類い稀なる美貌の持ち主ですが、今のアイドルのように浮ついた感じがなく、演技力も確かなものがあり実に魅力的な女優でした。藤竜也と結婚して引退する前年、昭和42(1967)年9月には、フジテレビ「シオノギテレビ劇場」において『東京物語』に出演し、映画では原節子が演じた紀子役を務めました。

周吉役は宮口精二、妻とみは映画と同じく東山千栄子が演じました。映画では三男敬三を演じた大坂志郎は長男幸一役となり、長女志げは木暮実千代、また映画で志げの夫庫造を演じた中村伸郎も出演しました。残念ながら映像を観ることは叶いませんが、32歳になった引退間近の芦川いづみは、紀子役を見事に演じ切ったのではないでしょうか。

父が作曲した「あじさいの歌」の主題歌について、芦川いづみが石原裕次郎との微笑ましいエピソードを述べている貴重な文章があります。石原裕次郎が歌う「あじさいの歌」の音源と一緒に、その文章の一部をご覧ください。

「あじさいの歌」で真っ先に思い出すのが、裕ちゃんが歌っている主題歌です。映画の撮影が終わったときに、この主題歌を聴いて泣いてしまったくらい本当にステキな曲です。裕ちゃんの甘く柔らかい声で、♪花のよそおい、美しく……と始まり、途中で少し裏声になるところなんてたまらないですね。今でもこの曲を耳にすると涙が出てしまいます。一度、裕ちゃんにお願いして「あじさいの歌」の主題歌を何かの撮影現場で、歌っていただいたことがあります。しかも、ぜいたくなことに、私の耳元で。ファンの方には怒られてしまいそうですけど、本当に嬉しかった。(中略)

実は最近、お友だちに誘われて、カラオケに行くようになったのですが、そこでも裕ちゃんの曲ばかり歌っています。なかでも「あじさいの歌」だけは、マイクを手に前奏を聴いているだけでドキドキしてしまうんです。しかも歌いだすと、裕ちゃん特有の低音からだんだん普通の音域になって、最後にふわっと高音を抜くように出すところが、私にはとても難しくて、私流でしか歌えないのが残念です。(中略)

「あじさいの歌」では、今も大切に手元に置いてあるものがあります。裕ちゃんにおんぶしてもらったときのスチル写真です。映画の中で裕ちゃんが、道端で足をくじいてしまった東野英治郎さんや、路上でめまいを起こした轟夕起子さんをひょいとおんぶするシーンがありますでしょう。そんなシーンを当たり前のように爽やかに見せてしまうのが裕ちゃんらしいところなのですが、おふたりがおんぶされているのがうらやましくて。私も、裕ちゃんにおんぶされたいなぁと思っていたら、スチル担当の方が撮ってくださったのです。カメラマンに「両足をぴゅっと出したら面白いんじゃない? 」と言われたので、ふざけながら撮ったものですけど、今となっては良い記念になりました。(芦川いづみ)

出典:「石原裕次郎シアター DVDコレクション あじさいの歌(朝日新聞出版)」

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

Translate

category

ページ上部へ戻る
Translate »