楽譜のデジタルアーカイブ化

デジタルアーカイブとは、主に紙などのアナログ媒体でしか保存されていない情報を、スキャナなどを使ってデジタル化し、保管・検索・閲覧が可能な状態にすることです。古文書や保管書類、書籍や雑誌などは、かなりデジタルアーカイブ化が進んでおり、インターネット上で閲覧可能なものも多数存在しています。

オックスフォード大学ボードリアン図書館が、この夏に楽譜約6,000点をデジタルアーカイブ化する計画である、という記事を目にしました。なるほど…確かに楽譜は出版されたもの含め、アナログ状態のままのものが大量に放置されていることは想像に難くありません。たった6,000点の楽譜のデジタル化へ着手するだけで、新聞記事になるくらいですからね。最近では、初めからフィナーレやシベリウス等の専用ソフトを使って楽譜を作成するケースが増えているとは言え、まだデジタル化されていない楽譜は一体どれほど存在しているのでしょうか?

なぜ、そんなことが気になったのかといいますと、実は父高順が作曲した吹奏楽の作品を再版する話が持ち上がり、父の楽譜を収集する必要が生じたためです。父の楽譜類は、実家に全て保管してあるものとばかり思っていましたが、探しても見つからない楽譜がいくつもあるのです。

そのため、つい先日桜田門の警視庁を訪問し、警視庁音楽隊の楽譜係の方に頼んで、書庫の中から父の楽譜を探していただきました。昔の楽譜は必ず保管してあるはずとのことですが、楽譜は年々増える一方で、残念ながら膨大な楽譜の中から目的の作品を見つけることはできませんでした。幸い以前出版した時の楽譜が残っており、それをコピーして持ち帰ることができました。しかし、再版にはオリジナルの自筆譜が必要とのことでしたので、果して出版物のコピーが役に立つかどうかは定かではありません。

それにしても、オリジナルの自筆譜は一体どこへ行ってしまったのでしょう?警視庁音楽隊に無いとすると、航空自衛隊音楽隊又は以前出版した会社に預けたままになっているとか…。楽譜の保管については、我家でさえそのような状態ですから、他の作曲家の遺族の方々も似たような状況ではないかと想像します。

せっかく作曲家が精魂込めて作成した楽譜が、時間の経過と共に忘れ去られてしまい、行方が分からなくなってしまうのは残念なことであり、文化的価値の喪失に違いありません。過去の作品の中には、後世になって評価されるものや、海外で注目を集めるものが存在する可能性は誰にも否定できないでしょう。

しかし、楽譜が消失(紛失)してしまっては二度と演奏されることもないし、再評価される機会は決して訪れません。誠に惜しいことと言わざるを得ません。そのような文化的損失が生じないように、過去の楽譜をデジタルアーカイブ化し、保管・検索・閲覧ができる状態にすることが求められます。

明治学院大学図書館付属の日本近代音楽館が2011年に開館し、楽譜のデジタルアーカイブ化へ取り組み始めましたが、まだまだ十分に機能しているとは言えません。いよいよ父高順の楽譜の整理に着手すべき時期が来ているようです。父の作品をきちんとした形で残し、後世へ継承していくことこそが、私にとって最も取り組むべきテーマではないかと思います。これこそライフワーク(使命)と言っても過言ではないでしょう。

sight-and-art.org

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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