吹奏楽とブラスロック

ブラスロックと聞いてピンとくる人は、もはや中高年世代に属する年令を迎えた方ではないでしょうか。ブラスロックとは、1970年前後に流行ったホーンセクションを加えた大きな編成のロックバンドが演奏する音楽に対する呼称でした。

あの当時、BS&T(ブラッド・スウェット&ティアーズ)、シカゴ、チェイスなどがブラスロックグループの代表格と言われていました。それまでのロックは、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードという編成が主流でしたから、ブラスロックの登場は新鮮であり、衝撃的だったように記憶しています。

私は中学校に入った頃から洋楽に興味を持ち始め、すぐにブラスロックに夢中になりました。でも、あの頃ブラスロックに関心を示す同級生は少なく、だいたいハードロックかポップスに人気が集中していたように思います。しかし、私はシカゴの「クエスチョンズ67/68」やBS&Tの「スピニング・ホイール」、チェイスの「黒い炎」などが好みで、シングル盤やアルバムを購入しては繰り返し聴いたものでした。

当時は全く意識しませんでしたが、ちょうど父高順が吹奏楽の作曲に力を入れ始めた時期も1970年前後からだったのです。父の代表作「ブルー・インパルス」が世に出たのが、ちょうど1970年でした。もちろん、父は戦時中の軍楽隊時代から吹奏楽作品の作曲は行っていましたが、戦後はラジオ、映画、テレビ向けの作品や、ピアノ曲、歌曲を主に手掛けてきました。

シカゴの「クエスチョンズ67/68」とBS&Tの「スピニング・ホイール」は1969年、チェイスの「黒い炎」は1971年の作品でした。もしかすると、「ブルー・インパルス」はブラスロックからヒントを得た可能性も無くはないな…などと考えてしまいました。なぜならば、ロックやポップスの類には全く興味のなかった父が、私が愛聴していたシカゴやBS&Tの音楽だけにはとても関心を示していたことを思い出したからです。「ロックなど、くだらない音楽だ」と言って毛嫌いしていた父でしたが、ブラスロックだけは興味深そうに聴いていたようでした。

父が特に興味を示した、BS&Tの「スピニング・ホイール」の動画を見つけました。BS&Tはブラスロックの草分け的存在でしたが、ジャズやボサノバの要素を採り入れたり、ホーンセクションのレベルも高く、クラシック音楽の素養のあるメンバーを多数擁しており、音楽的には最も優れたグループでした。今思うと、父はBS&Tのホーンセクションのアレンジに興味を示していたのかも知れません。

そういえば、ブラスロックはどこか吹奏楽に似ているところがあったな…ということに今更ながら気付きました。最近は少子化の影響もあって、吹奏楽の部員数も減少傾向のようです。そのため、小編成向けに吹奏楽曲をアレンジすることもあると聞きました。思いがけないことですが、吹奏楽とブラスロックの垣根が低くなってきているのかも知れません。

そして、驚くべきことに父の指揮で航空自衛隊音楽隊によるブラスロックのアルバムが見つかりました。恐らく1970年代に録音された物ではないかと思いますが、そこにはBS&Tの「スピニング・ホイール」も収録されていました。LPレコードから音源を抽出しましたので、是非お聴きになってみて下さい。

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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