ナガサキの郵便配達【日本人には書けなかった原爆の悲劇】
1978年、初めて長崎を訪れた英国人作家ピーター・タウンゼントは、被爆者に会ったその日に、あまりにも感動的で衝撃的な話を聞き、長崎の物語を書こうと思いたちました。
1982年から本格的な調査を始め、被爆者の谷口稜嘩氏と運命的に出逢い、自宅に通い詰め、6ヶ月もの間、深夜まで話し合いを繰り返しました。さらに多くの被爆者達とのインタビューを重ね、彼らと一緒の時間を過ごし、長崎の街の空気を吸い、何十キロメートルも歩き回り、医師、科学者、社会学者、宗教指導者、さらに軍関係者など数々の人々から貴重な証言を集め、1984年『The Postman of Nagasaki』を書き、英国で出版され、原爆とその後遺症がいかに恐ろしいかと言うことを初めて世界に伝えました。
一被爆少年の悲劇とその後の苦しい闘病生活を描き出した感動的なドキュメンタリー物語であり、と同時にその叙情詩的表現が絶賛されました。
残念ながら日本語版は、出版されて間もなく絶版となり長い間読まれることはありませんでした。
生前の谷口稜嘩さんと会い、日本語版の再版を依頼されたスーパーエディションの斎藤芳弘は、ピーター・タウンゼントさんの娘さんであるイザベル・タウンゼントさんと連絡を取り、著作権、翻訳権の承諾を得て、2018年に日本語版を再版しました。
本公演は、この「平和の教科書」とも言える『ナガサキの郵便配達』を遺したピーター・タウンゼントさんの作家としての業績に敬意を表すと同時に、核兵器のない恒久平和への想いを繋いで行くために「Together with Peter Townsend for Peace」として毎年イベントを開催しています。
今年新たに、フランス語版とロシア語版が出版されます。
ピーター・タウンゼント
故ピーター・タウンゼントは、第二次世界大戦中、バトル・オブ・ブリテンの空軍少佐としての役割を通じて英雄と見なされていました。
英国空軍将校としての長年の勤務の後、彼はジョージ6世の厩舎長を務めました。
マーガレット王女と彼の恋愛は、大きな注目を集めました。
歴史になっている困難に直面し、事件が終わったとき、彼は世界一周旅行に乗り出しました。
彼は作家になり、フランスに移住して、後年、彼は戦争の犠牲者である民間人と子供たちのために積極的に活動し、国連難民委員会と緊密に協力しました。
ナガサキの郵便配達は1982年より長崎市で本格的な調査をして、1984年にイギリスで、翌年にフランスで出版されました。
日本語版は、2018年に谷口稜嘩さんの要請で英語版から翻訳され、スーパーェディションから出版されました。
谷口稜嘩(すみてる)
私は、忘却を恐れます。
忘却が、新しい核兵器肯定へと流れてゆくことを私は恐れます。
私が最後の被爆者、長崎が最後の被爆地とならんことを。
2017年8月30日没 享年88
イザベル・タウンゼント
父も、私も、この壮大な平和運動の成功を心から祈っております。
核兵器が恐ろしいものであり、取り返しのつかない壊滅的な結果をもたらすという事実を若い人たちに知ってもらうこと、またこのことを教えることが、とても大事であると私は思っています。 私の父が谷口稜嘩さんの物語を書いてから31年。
その本が現在持っている意義の大きさを知れば、父は誇らしく思うでしょう。
核兵器の全廃を推進するという谷口さんの生涯の努力を、私は心から支持します。 第二次世界大戦を戦った戦闘機操縦士の娘として、私は我が子と孫たちが戦争のない、核兵器の恐怖のない人生を送ること、そして人類が二度とこのような恐怖に耐える必要のないことを祈っています。
【朗読】
阿川佐和子
中江有里
長谷川真弓
松田洋治
【演奏】
クラシックギター 佐藤洋平
サイトウ・メモリアルアンサンブル
ヴァイオリン 本庒篤子
ヴァイオリン 内藤景子
ヴァイオリン 藤野 桂
ヴィオラ 斎藤美枝
チェロ 斎藤章一
コントラバス 中村文音
ピアノ 増井 咲