EXPO70 みどり館アストロラマ「前進」のテーマ(2/2)

009日本万国博覧会(EXPO70)が開催された1970年は、第二次世界大戦に敗れGHQによる占領期間を経て、戦後復興から高度経済成長を成し遂げた日本の最も輝かしい時代でした。
1960年、安保闘争で退陣した岸信介内閣の後任として、首相の座に就いた池田勇人は所得倍増計画を発表しました。
国民所得は右肩上がりとなり、個人消費と国内需要の拡大が経済成長を強力に牽引したのです。

そして1964年には東京オリンピックが開催され、翌1965年から1970年まで57ヵ月間続いた高度経済成長時代の好景気は「いざなぎ景気」と呼ばれました。
あの頃の日本は、実質経済成長率が年平均10%を超えており、欧米諸国の2倍から4倍という世界にも例のない高度経済成長の只中にあったのです。
1968年には、ついに日本のGNPはアメリカに次ぐ世界第2位へと躍進しました。
その2年後の1970年に開催された日本万国博覧会は、「人類の進歩と調和」をテーマに掲げた経済大国日本を全世界にアピールする象徴的なイベントでした。

004-1当時、社会の中枢を支えたのは戦前、戦中時代を経験した人達でした。
日本人の持つ技術力、意地とプライドが多くの不可能を可能に変えたのです。
当時の有名企業、研究者、建築家、芸術家らが一堂に会し、斬新なパビリオンの建設や映像・音響などのコンテンツ制作、展示物の製作にあたりました。

みどり館は、アストロラマと呼ばれる360度全天周スクリーン映像を上映し、万博総入場者数の約1割に当たる600万人が鑑賞したという大人気パビリオンでした。
10分間程の短編映画を観るために、最長で12時間も並ばなければならなかったほどの人気ぶりでした。
みどり館の館内は、灰色のスクリーンがドーム型の丸天井全面を覆っており、椅子は無く、鉄製の手摺りが並んでいました。
観客は手摺りにつかまりながら、ドームを見上げる姿勢で映像と音楽を鑑賞しますが、初めて体験するアストロラマの迫力に驚嘆し、館内は悲鳴やどよめき、笑い声が絶えませんでした。

007公開された映像は、午前中が「前進」、午後が「誕生」という2作品でした。
シナリオは谷川俊太郎、音楽は「前進」が斎藤高順、「誕生」は黛敏郎が担当しました。
斎藤と黛は、以前に小津安二郎の映画音楽を共に担当した経験がありました。
斎藤は1969年6月、みどり館の設計を請け負っていた大林組と学研の業務契約により、当時学研の教育映画の音楽を手掛けていた関係から、このビッグプロジェクトへの参加が決まりました。

同年、航空自衛隊音楽隊のために作曲した「行進曲“輝く前進”」をアストロラマのテーマ音楽に採用することにしました。
アストロラマ「前進」のテーマ音楽は、「行進曲“輝く前進”」の主題による変奏曲になっています。
駒沢オリンピック公園を行進する航空自衛隊音楽隊のシーン、蒸気機関車が黒煙を吐きながら疾走するシーン、日光いろは坂を高速で走り抜ける車のシーン、そして場内が明るくなり退館する際静かに流れるBGMに…繰り返し様々なバリエーションの「行進曲“輝く前進”」の主題が登場します。

008「誕生」の音楽を担当した黛敏郎は、小津安二郎の映画音楽以降めざましい躍進を遂げました。
黛は、1964年に放送を開始した「題名のない音楽会」の初代司会者として、お茶の間でも知名度を高めました。
万博では、みどり館以外に太陽の塔の「生命の讃歌」という音楽も手掛けていますが、それだけには留まらず、日本万国博覧会開会式「幕開く日本万国博」というテレビ中継番組の総合司会という大役まで担っていたのです。

日本万国博覧会は、1970年3月14日から9月13日までの183日間開催されました。
アストロラマ「誕生」の撮影は1969年11月に終了、音楽録音は1970年1月に完了、一方「前進」の撮影は1969年12月に終了、音楽録音は1970年2月に完了しました。
みどり館の入場者数は、1970年4月23日に100万人突破、5月30日に200万人突破、7月2日に300万人突破、8月4日に400万人突破、9月2日に500万人を突破し、最終的にはおよそ600万人の入場者を数えました。

そして閉会式の翌日、9月14日にコンパニオン解散式、さよならパーティーが催されました。
9月17日には、みどり館関係者の慰安旅行が行われました。
1970年9月30日、みどり会事務所閉鎖。
この日、1967年4月に万博仮出展の申請からスタートしたみどり会アストロラマプロジェクトは静かに幕を閉じたのです。
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動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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