小津映画のパロディ 『変態家族 兄貴の嫁さん』とは
周防正行監督から、「この作品のことには触れないで欲しい」というお願いがあったとか、なかったとかという話を聞いたことがありましたが、最近色々なところで周防監督ご自身が話されているので、恐らく大丈夫なのだろうと思い公開します。
周防正行が1984年に製作した監督デビュー作が、小津映画のパロディだったという話は何となく知っていました。噂の真相を確かめたくて、何とかその作品を入手したいと考えていました。
しかし、ネットで探してもなかなか見つからず、すでに廃盤でもあったため入手は半ば諦めていました。すると、アマゾンマーケットプレイスに中古のVHS版が出品されているのを見つけました。
VHSを動画変換できるソフトとアダプタは持っていたので、早速アマゾンマーケットプレイスから購入することにしました。届いたビデオテープの状態は良好だったので、すぐに動画変換を行いました。
とても期待して鑑賞しましたが、内容はちょっと残念なものでした。小津のパロディというよりも、どこにでもあるポルノ映画という感じで、自分としてはあまり評価できません。もちろん、この作品には賛否両論があり、小津映画評論でお馴染みの蓮實重彥氏は絶賛しています。
明らかに小津映画のパロディと思えるシーンが随所に見られますが、特別面白いとも感じませんでした。周防正行によると、「狙いとしては小津の描く世界観に同化してみたかった、ひたすら模倣してみたかった」ということのようですが…。
しかし、小津作品の模倣というにはあまりにお粗末で、台詞は棒読み(わざと?)、不自然でぎこちない動作、つまり役者が下手くそに演じれば演じるほど小津映画のように見えてしまうという、小津ファンにとっては何とも笑うに笑えない代物でした。どうせならば、音楽も小津調(斎藤高順風)にしてしまえば、もう少し興味深い作品になったかも知れません。
解説文の中に、「晩春」で笠智衆に送り出された原節子の嫁ぎ先が変態の家だった…という一文があり、この着想は秀逸だと思いました。その辺りの設定にもっとこだわりを持たせていたら、結構面白い作品になった可能性があります。
唯一の救いは、当時無名だった大杉漣が笠智衆を真似た怪演ぶりでしょうか。これはなかなか笑えます。明らかに『秋刀魚の味』のパロディだな…とわかるシーンがあったので、問題のシーンを『秋刀魚の味』『変態家族』と連続して動画を作成してみました。全部で3分強の短い動画ですので、続けて一気にご覧下さい。