しぐれ旅

「しぐれ旅」

松竹映画『浮草物語』より
 作詩:佐藤惣之助
 作曲:三界稔
 編曲:三界稔
 歌唱:東海林太郎

「しぐれ旅」の発売は1934年(昭和9年)10月とされており、『浮草物語』の公開が1934年(昭和9年)11月なので、ほぼ同時期に当たります。小津監督は、自分の気に入った音楽を劇中に使用する傾向がありましたが、「しぐれ旅」に関しては『浮草物語』の主題歌として発売されたレコードのようです。

一方、『浮草』の劇中に使用された「南国土佐を後にして」は、丘京子が1953年9月にラジオ高知の番組中で歌い好評だったことから日本マーキュリーからシングル発売され、次に鈴木三重子が1955年にテイチクレコードからシングル発売しました。その後、1959年5月にペギー葉山の歌でキングレコードからシングル発売されると、テレビの普及とともにお茶の間で絶大な支持を得て、累計200万枚にも上る大ヒット曲となりました。

『浮草』の公開は1959年(昭和34年)11月なので、すでにヒット中だった「南国土佐を後にして」を気に入った小津監督が劇中で使用したと考えられます。また、『晩春』『麦秋』『お茶漬けの味』『東京物語』で助監督を務めた齋藤武市監督による日活映画『南国土佐を後にして』が、『浮草』より少し前の1959年(昭和34年)8月に公開されており、ペギー葉山の歌が主題歌に使われています。

『浮草物語』と『浮草』はほとんど同じストーリーですが、『浮草物語』の脚本は池田忠雄、原作はジェームス槇(小津安二郎)、一方『浮草』の方は野田高梧と小津安二郎による共同脚本となっています。両作品ともストーリー展開が大変に魅力的で、小津作品の中でも特に好きな作品の一つなのですが、実は下敷きとなる映画があったことをご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

小津監督の代表作『東京物語』は、1937年公開のアメリカ映画『明日は来らず(Make Way for Tomorrow)』、監督レオ・マッケリー、脚本ヴィナ・デルマー、原作ジョセフィン・ローレンス、ヘンリ・リアリー、ノーラン・リアリーに触発された野田高梧と小津安二郎が、東京と尾道を舞台に家族が織りなす人間模様を丹念に描いた物語を創作しましたが、ストーリー展開は『明日は来らず』と驚くほどよく似ています。

そして、『浮草物語』は1928年製作のアメリカ映画『煩悩(The Barker)』、監督ジョージ・フィッツモーリス、脚本ベンジャミン・グレイザーが下敷きになっていました。以下のサイトに『煩悩(The Barker)』のあらすじが紹介されていますが、『浮草物語』の最も核となる部分がほとんど同じことに驚かされます。

そのような点から、『浮草物語』は純粋なオリジナル脚本とは言えず、『煩悩(The Barker)』から着想を得たある意味リメイク作品と言えなくもありませんが、『浮草物語』『浮草』ともに随所にオリジナリティが盛り込まれ、見事にブラッシュアップされた傑作であることに何ら変わりはないと思います。

「映画.com」
https://eiga.com/movie/63722/

「MOVIE WALKER PRESS」
https://moviewalker.jp/mv8378/

「オンライン映画演劇大学」
https://cinemastage.jugem.jp/?eid=263

動画について

①ブルー・インパルス ②オーバー・ザ・ギャラクシー ③オンリー・ワン・アース ④輝く銀嶺 ⑤東京物語(吹奏楽アレンジ) ⑥彼岸花(吹奏楽アレンジ) ⑦秋刀魚の味(吹奏楽アレンジ)

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